見たもの雑感

〇フリーバッグ Fleabag(Amazonプライム

少女マンガのような胸キュンシーンに向かってアラサー女子の壮大なマスターベーションを延々見せられているような居心地の悪さ。でもキュンキュンしてしまうのは同族だから?

モヤモヤしながらしながらも最後まで見てしまった。クリエイターは主演も務めるフィービー・ウォラー=ブリッジ。この人の他の作品『クラッシング』でもそうだったんだけど、なんつーか、いろいろこじらせまくってる主人公が、実はとても魅力的でモテるという描写を、自演でやってることに気恥ずかしさを感じてしまうというか(確実に主人公は自分自身の投影だろうし)…。結局エミー賞までのぼりつめちゃったけど、私のこの人の作品の印象って、主人公いろいろこじらせたりダークサイドあったりするけれども、あんまり深みはなくて、結局いい男との胸キュンラブシーンをやりたいだけなんじゃないかという疑惑が(爆)そして私もそれにまんまとはまってキューーンとしてしまい、結局最後まで見てしまうというw 少女漫画風の胸キュンフェアリーテイルに憧れてるんだろうなあ、と自分に似た匂いを感じてしまうのです…。こうして自分の自意識まで意識させられる不快感がモヤモヤ感の主成分なんだろう。でもまあ、そんな恋に恋する乙女の夢を自演で実現させちゃって、社会的評価までもらっちゃって、羨ましいといえば羨ましい。しかし同じ自意識肥大でも、『クレイジー・エックス・ガールフレンド』と印象が全然違うのはなんでだろう?クレイジー~のレベッカは、自己嫌悪からくる他人=恋愛への依存から脱するけれど、フリーバッグは、相変わらずロマンチック・ラブを探し求めて「ハチャメチャで魅力的な自分」を演じていくんだろうな、そういう物語を再生産していくんだろうな、という無限マスターベーション感が決定的に違うんだろうな。応援したくなくなる感じ?w 

ともあれ、『ブリジット・ジョーンズの日記』しかり、『クレイジー・エックス・ガールフレンド』しかり(『GIRLS』なんかもそう?)、「こじらせてぶっ飛んでてドタバタしてる女性が実はモテてる」話の系譜というのは結構トレンドなのか。Metoo運動の影響からそんなこじらせ女性のユートピアともいえるストーリーに光を当て始めた側面もあるのか。だとしたら、この系譜はまだまだ発展途上で、個人的には『クレイジー・エックス・ガールフレンド』のように、最終的には自己と向き合うことで自分を好きになる旅の物語になってほしいなと思う。バリバリ少女マンガで育った者としては、ラブコメロマコメも大好物だし、それはそれでいいんだけど、こじらせたままの恋愛・セックス依存を延々と見せられるのは痛々しく、惨めな気持ちになる。いろんなことを自分でぶち壊し、同じことを繰り返し、ブリジット・ジョーンズのようにひたむきさがあるかと思いきや、自己憐憫・自己陶酔のループ。そしてそんな自己憐憫・自己陶酔女がどうしてモテまくるのかよく分からない。とにかくミー・ミー・ミー、アテンション・プリーズ!のオン・パレードなのだ。まあでもウォラー=ブリッジとしては、このmessな状況をそのままさらけ出すこそが狙いであり彼女なりのイギリス版「ありのままで」なのかもしれないが。タイトルがそもそも「Fleabag(みすぼらしい、不潔な人間)」なわけだし。まあラストは「第四の壁」である自意識と別れを告げて去っていったので、この物語的には主人公の成長を暗示しているのかもしれないけれど。なんか疑っちゃうw

あ!!!あと、超大事なことを言っておくと、どうして最後まで見ちゃったかというと、シーズン2の恋のお相手、司祭役のアンドリュー・スコットが壮絶良かったから!はっきり言ってウォラー=ブリッジより彼に賞をあげたい。ドラマ中でも「ホットな司祭」と描写されてたけど、まさにホットな司祭でしたよ。マッチョでもなく背も高いわけでもなく、何ならハンサムでもないんだけど、繊細な、深い演技をしてました。メロメロ。でも物語の司祭としての彼は、結局ある意味「悩める魅力的ドタバタ信徒」への依存があって、こんなこと何度も繰り返してるんだろうなと想像してしまったけど。

そして、超個人的に大事なことその2。近頃、「メタルがこじらせ女子&中年&鬱憤たまりまくりママの救世主的音楽になっている」件。このFleabagでも、エンドタイトルでかかる音楽(このドラマのテーマ曲といってもいいのでは)が、メタル風激しいロック。これは正直気に入りましたよ、ええ。それで思い出したけど、例えば最近で言えばシャーリーズ・セロン主演の不思議ストレスママ映画『タリー』。ネットフリックスの女性二人友情ミステリードラマ『デッド・トゥ・ミー~さようならの裏に~』。全部、溜まりまくってる女性のマグマを開放する音楽として、メタル(もっというと、激しいデス・メタル風音楽)が使われてます。何、私の真似?!やっと分かってくれたの?「おっせーよ」という思いも抱きつつ、なんか純粋に音楽として好きというより、最近「イタイ女が好む音楽」という不名誉なレッテルが貼られつつありませんか?!という危惧も覚えています。確かに、私も我が子にチョームカついたりすると、イヤホンでガンガンにかけてますよ、スレイヤーとかスリップノットとかレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなんかを。つい先日も、”People=Fuck”という曲を聴きましたよw でもね、別に怒ってないときに聴いたってとっても素敵な音楽なんですよ♪これだけは言っておきたい。まあ、魂の叫びでもあるので、これはこれで新たなステレオタイプとして、怒れる女性に親和性があることをとうとう世間も気づいたか、っていうところで仕方ないのか。

そんなこんなで、こじらせアラサー女子のマスターベーションを延々見せられてうんざりするような、でもキュンとしちゃう自分への後味の悪さも感じるような、「イヤミス」ならぬ「イヤコメ」という新しいジャンルを体験させてもらったということで良しとするか。

ウォラー=ブリッジには、今後もたくさんの胸キュンシーンを連発してもらって、私もただそれだけを目当てに便乗したいと思う、複雑な乙女心。『クラッシング』早く更新してくれ。

 

〇モダン・ラブ (Amazonプライム

一話がピーク。シーズン2に期待。30分はいいね

Netflixなんかのストリーミング・サービスは、お金かけてるだけに野心作とかSF、ファンタジーが多くて、こんなささやかなヒューマン・ドラマ系が少ないなと寂しく思っていたところにタイミング良く。一話30分とコンパクトで、心温まる系のいろんな形のラブ・ストーリーニューヨークタイムズのコラムが原案だそうで、なるほどという感じ。でも残念ながら、一話目の感動がピークでした、私は。一話目はとても素敵な物語だった。男女の愛でも、血縁の愛でもない、まさにモダン・ラブ。こういう話が続くのかなーと思ったけれど、そういうわけではなかった模様。でも、一日の終わりにご褒美がわりに見るにはちょうどいい感じだな、と思いました。ニューヨーク大好きなので、出てくる場所・おうち、そのインテリアなんかがものすごく素敵なのも目の保養。

結局、アマゾンにもNetflixにも入っているのに、私が毎週欠かさず一番楽しみにしてるドラマが無料のDlifeの『コード・ブラック』という皮肉w これは完全に私の好みの問題だけど、『BOSCH』『TRUE DETECTIVES』『Law & Order 性犯罪特捜班』のような超骨太・ハードボイルドクライムドラマ、『コード・ブラック』『This is US』のような見ごたえたっぷりのヒューマン・ドラマ、『刑事モース』のような王道愛着系ミステリー、『クレイジー・エックス・ガールフレンド』『グレイス&フランキー』『ブルックリン99』『サウスパーク』『シリコンバレー』のような気持ちよく笑えるコメディ、『SIX』みたいな野郎ばかりのミリタリードラマ、こういうのが揃ってたら十分!だからあれだな、ネトフリとかアマゾンに期待したいのは、オリジナルの野心作よりも、CBSとかABCとかのネットワーク局発の、『24』とか『プリズン・ブレイク』ほどエンタメ大作寄りじゃない、地味だけど脚本がしっかりしてる本格ドラマ、これを大量に仕入れてほしい、それだけです(爆)!!!

 

意外とフリーバッグで長くなってしまったので(それも何だか後味が悪いw)また改めて雑感続きを。